海の恵み 2011 5 29

書名 日本は世界1位の金属資源大国
著者 平沼 光  講談社+α新書

 東日本大震災の記憶も生々しいですが、
三陸沖は、世界三大漁場のひとつとして知られ、
北からは寒流の親潮、南からは暖流の黒潮がぶつかり合う漁場です。
 そのため、マグロ、カツオなどの暖流系の魚だけでなく、
サケ、サンマなどの寒流系の魚も多くなっています。
また、沿岸では、ワカメ、コンブ、ウニなども、名産として知られています。
 しかし、今回取り上げるのは、
金属資源としての「海の恵み」です。
 この本によれば、
「宝の持ち腐れを避けるために」という見出しで、
こう書いてあります。
「海水から採取できる鉱物は、リチウムやウランだけではない。
日本はコバルトに関しても、
海外からの輸入は80パーセント以上という高い依存率を示している。
 ところが、日本に流れてくる黒潮が運んでくるコバルトは、
なんと年間で16万トンにもなる。
 これは日本の年間コバルト消費量の1万5000トンを軽く超えるばかりか、
世界の年間コバルト消費量である5万7800トンさえも凌駕してしまうほどの量だ。
 そのコバルトを日本の技術で黒潮から調達できるとなれば、
過度の輸入依存という日本の悪い体質が改善され、
資源リスクの軽減にもつながるのではないか」
「黒潮の恵みといえるレアメタルは、まだ他にもある。
モリブデンの現有埋蔵量と現在の生産ペースを考えると、
2050年には現有埋蔵量を使い切ってしまうといわれており、
その意味で、モリブデンは、供給リスクが高いレアメタルともいえる。
 日本のモリブデンの年間消費量は、およそ5万1300トン。
対して、黒潮が毎年運んでくるモリブデンの量は、
1580万トンと桁違いの量を誇っている。
 黒潮が運んでくるレアメタルには、チタンもある。
日本のチタンの年間消費量は、3万5000トン強で、
一方、黒潮が運んでくるチタンの量は170万トンと、こちらの量も半端ではない。
 バナジウムの日本の年間消費量は1万トン強で、
それが、黒潮によって年間340万トンも運ばれてくるのだから、
海の大きさ、偉大さに、あらためて畏敬の念を覚えてしまう」
 そのほか、Goldの埋蔵量は、
南アフリカが6000トンで世界第一位の規模を誇っていますが、
都市鉱山ということを考えれば、
日本の都市鉱山における埋蔵量(蓄積量)は、6800トンだそうです。
 さらに、Goldの地下資源でも、鹿児島県の菱刈(ひしかり)鉱山では、
金鉱石の品位が高いそうです。
 世界の主要金鉱山の平均品位は、1トン当たり約5グラム。
菱刈鉱山の鉱石は、1トン当たりに含まれる平均金量が40グラムを超えるものとなっています。
金鉱石の品位に限れば、菱刈鉱山の品位は、世界一となります。
 こうしたことを書くと、さらに円高が進む懸念がありますが、
将来、日本は、金属資源の輸出大国になるというのは、
国の目標としても、科学者の目標としても、夢のあるテーマでしょう。



















































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